強迫観念、原因と治療法
前回に引き続き、不安障害の一つ。強迫観念についてです。
今回は強迫観念と強迫行動を引き起こす、原因とその治療法を紹介します。
その前にまずは不安障害と脳の関係
人間は不安や恐怖を感じると、脳の「扁桃体」と呼ばれるところから、
シグナルが発信され、体の隅々に伝わります。
すると心拍数の上昇や呼吸の増加といった現象を引き起こすのです。
通常この現象は、外敵(目の前の脅威)から逃げる為に体に備わった仕組みです。
例えば、呼吸が増加すると、筋肉により多くの酸素が供給される為、
速く逃げることができます。
扁桃体は、活動を活発にする神経回路と抑制する神経回路に分かれており、
バランスが保たれています。
このバランスが崩れて、不安のシグナルが大きくなりすぎると、
適切な場面ではないのに、心拍が上昇したり呼吸が増加したりするのです。
そして筆者がそうだった様に、そのこと事態が不安の種になり、さらに状況を
悪化させいきます。
では強迫障害の原因は?
強迫障害の特徴である、強迫行動。
つまり繰り返しの行動は、意思決定や運動機能をつかさどる「線状体」と
理性をつかさどる「前頭前野」が関係しています。
通常、線状体による行動は、理性によってセーブされているのですが、
前頭前野の異常によって理性を抑える力が弱まると、意思決定や運動機能に
制御が効かなくなり、同じ行動をやめられなくなります。
まだ謎が多い不安障害
そもそもなぜ脳の特定の部位に異常が起こるのか。
実はこの原因については、まだはっきりとしたことはわかっていません。
何らかの細菌の感染によって線状体に異常が起きるとか、親からに遺伝の影響だとか言われています。
これは筆者の考えですが、遺伝の関係は多そうですね。
あとは、育ってきた環境や思考の刷り込みなども影響してそうです。
治療法は!?
近年主流となっている不安障害の治療方法は、
薬物療法では、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」という薬剤を用います。
これは、扁桃体の活動を抑制する為に用いられます。
扁桃体の活動を抑制する神経回路の情報伝達には、セロトニンという物質が必要になります。
扁桃体が活発になると、セロトニンが神経細胞に取り込まれるのですが、
この薬剤で、その通路を塞ぎ、常に神経細胞の近くにセロトニンが満ちた状態にすることで、
突発的な発作などを抑えます。
認知行動療法は、患者の不安に対する認知を改善していく方法で、前頭前野のコントロールを
強化することが目的です。
心理士などに相談し、適切な治療方法で心のケアを行うことで、ゆっくりと認知を段階的に改善していきます。
効果が出るまでには、時間がかかりますが、その分得られる効果は大きいです。
海外では、「ショック療法」と言って、嫌な行動を無理やりやらせてみると言った方法も採用されている様です。
時間をかけて、認知行動療法で根本的な部分の不安や認知を変えていき、突発的な発作は薬物療法で抑える。
二つの治療法をうまく利用することで、少しずつ不安に立ち向かっていきましょう。
心当たりはないですか?誰にでも起こりうる「不安障害」とは
こんな経験はありませんか??
私が高校生の頃、電車通学中に突然激しい動機に襲われたことがあります。
冬なのに、汗が止まらず、目眩がして、いっそのこと倒れてしまった方が楽になれるのではないかと思うくらいに、気分が悪くなりました。
すぐに途中下車し、駅のベンチで横になってことなきを得ました。
別に心臓など身体の健康状態に異常はなかったので、「朝ごはん急いで食べすぎたかな?」くらいの感覚でした。
しかしそれからというもの、同じ様な条件下で電車に乗った時など、発作のことを思い出し、不安や恐怖で仕方がありませんでした。
案の定、今までの人生で5回ほど同じ様な発作がありました。
しかも全て電車内という環境下で。
最近になってこの不安障害のことを知るまでは、その原因がわからないままでした。
不安や恐怖の感情
そもそも人間の持つ不安や恐怖といった感情は何のために備わっているのか。
その理由は、目の前の不安や将来への危険を回避するために備わっています。
しかし、必要以上にその感情が大きくなってしまうと、日常生活に支障をきたす、いわゆる「障害」と診断されてしまう可能性があります。
不安障害の一つ。「強迫性障害」
不安障害の種類は様々で、過去のトラウマが原因となって起こる「PTSD」や何らかの感情や思い込みに支配される「強迫性障害」などがあります。
今回はこの強迫性障害について紹介します。
実は、過去の電車での発作とは別に、「これって不安障害なんじゃ?」と思うものがあります。
それが一般的に「潔癖症」と呼ばれるものです。
この潔癖症、ただの「自分のわがまま」や「こだわりが強いだけ」と思っていたのですが、これも「脅迫障害」。そしてそれによって起こされる強迫観念と脅迫行動であることがわかりました。
強迫観念と強迫行動
潔癖症を例に挙げて説明しますね。
「自分の手が激しく汚れている」と思い込む考えを強迫観念。
そして、その不安を取り除こうと手洗いを必要以上に繰り返すことを強迫行動と言います。
私は、お金や不特定多数の人が手にするものを触った時は、石鹸で手を2〜3回洗ってしまうことがあります。しっかりと洗えば、一回で手中の菌は落ちると分かってはいるのですが、なぜかそれ以上に洗ってしまいます。
他にも、鍵を閉めたのに、もう一度開けては閉め直すといった行動を繰り返したり、特定の数字に強いこだわりを持ったりなどがあります。(ちなみに私はテレビの音量などは17、19など奇数に調整してしまう癖があります笑)
通常、こういった繰り返しの行動を取ったとしても、本人が望む「完璧」に到達することはありません。
それだけではなく、いくらやっても強迫観念が消えることはないので、ますます不安が大きくなると言う負の連鎖が続きます。
不安障害の原因とは!?
では日常に支障をきたすほどの不安はなぜ引き起こされるのか?
「扁桃体」をはじめとした脳の様々な部位が関係しています。
次回は、この脳の仕組みや不安障害を克服するための治療法をご紹介します。